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ルカク

ルカクが示した成長の跡

ロメル・ルカクがマンチェスター・ユナイテッドに移籍した当初、周囲の大半は彼がスピードとパワーで相手DFを恐怖に陥れるセンターFWという印象を抱いた。

たしかに、スピードとパワーはルカクの長所だ。しかし、ワールドカップで奮闘を続けているルカクには、さらに優れた部分がある。ベルギーは、金曜に行われる準々決勝で優勝候補ブラジルと激突する。

ロシア大会で彼が決めた4ゴールを見てもらいたい。パナマ戦ではダイビングヘッドに加え、左足での絶妙なシュートを決めた。チュニジア戦では右足でゴールの隅に決める技ありの得点をマーク。

相手DFのマークを振り切れた理由は彼のスピードにあるものの、冷静に、精確にシュートを決められる実行力があってのこそ。それは筋力も、マークを外す能力も関係ない。フィニッシュの力のみ求められる。

ルカク
イングランド戦をベンチから見つめるルカク

日本とのラウンド16では得点を決められなかった。チャンスを生かせない場面もあった。昨季もユナイテッドのトップスコアラーを批判した連中は、ベルギーが日本のアップセットを回避できなければ、即座にルカクを批判していただろう。

しかし、彼は最も重要な局面で知性を発揮。試合最後の攻撃の場面でフリーランニングでスペースを作りだし、トマス・メウニエルが再度からクロスを供給。この場面こそ、ルカクその力を最大限に発揮した瞬間だ。

大舞台に弱いという批判をかき消すチャンスで、ワールドカップのノックアウトステージの勝敗がかかった場面だった。大会得点王、栄光、この試合を通して生かせていなかったチャンスについて考えたとしても不思議ではなかった。

だがルカクが選んだプレーは特筆的だった。日本の主将、長谷部誠がマークについているのを察知。シュートをブロックされる可能性を考え、自らダミーとなってボールをスルーし、ナセル・シャドリがシンプルにボールをフィニッシュさせた。

このプレーでルカクはボールに触れていない。だが、ベルギーが見せたカウンターアタックでの彼の動きは、子供たちにとっての良い教材とも言える。チームという、より大きなゴールを優先した。自分にチャンスが巡ってきても、ヒーローになることなどまったく考えなかった。

この考え方は、真新しいものではない。彼はピッチを離れても知的な人間で、Aonトレーニングコンプレックスでメディアとのインタビューに応じる際も、複数の言語を使い分けている。それでいて聞き手を魅了しているのだ。

代表のチームメートを率い、なすべきこと、そのために必要な集中を仲間に意識させている。彼はゴールを決めることに執着していない。もちろん頭の片隅にはあるだろうが、より大事にしているのはチームであり、チームとして成し遂げられる方を優先している。

ルカク

ワールドカップでどういう結果が待っていようと、1年前にユナイテッドに加入した当時の先入観は、プレシーズンのトレーニングに加わるときには変わっているはずだ。

屈強なフィジカルを持つセンターFWだけが持ち味ではない。それに、大舞台に弱い選手でもない。何よりもゴールを優先する選手でもない。

ロメル・ルカクは、25歳ながら知的で、ワールドカップ・ロシア大会で美しいフィニッシャーとしての一面も見せている。

これはマンチェスター・ユナイテッドにとっても、極めて喜ばしいことなのだ。