最後方からのプラスワン
フットボールの移籍はどれも興奮を誘う。しかし、マンチェスター・ユナイテッドの歴史上、アンドレ・オナナほど興味をそそられる加入はないだろう。
どの選手もユニークなものをもたらすが、今回はそれ以上だ。
カメルーン出身のアンドレは才能に溢れ、オールド・トラッフォードに必要不可欠とされる、自信に満ち溢れるキャラクターを備えている。しかし、それはユナイテッドが獲得した選手の多くに言えることだ。
オナナがユナイテッドの全選手を唸らせる理由は単���で、彼の流暢なボールさばきが、他にはないチームを作り上げる重要な要素になり得るからだ。
大げさに聞こえるかもしれない。しかし、エリック・テン・ハフが率いたアヤックスや、インテルナツィオナーレが1-0で敗れたにもかかわらずオナナが輝きを放った先日のチャンピオンズリーグ決勝を観た人なら、テクニックに秀でたGKがいかにチームのパラメーターを広げることができるか理解できるだろう。
テン・ハフ監督は、優れた技量の持ち主と評価するオナナについて聞かれた際、「キーパーにとって最も重要なのは、常にクリーンシートだ」と答えた。
「キーパーの能力はゴールをクリーンに保つこと。だから、これが良いGKの第一の基準だ。しかし、現代フットボールでは、後方からの優れたプレー、アウトプレーの資質も求められており、アンドレはその資質を備えている」
オナナはバルセロナの有名なラ・マシア・アカデミーでプロとしてのキャリアをスタートさせ、2015年にアヤックスに入団した。ユナイテッドファンなら、ポール・ポグバとヘンリク・ムヒタリアンがストックホルムでの優勝に貢献した2017年のヨーロッパリーグ決勝での彼の存在を覚えているかもしれない。
オナナが本当に高く評価されるようになったのは、テン・ハフが率いた2018-19シーズンのアヤックスだった。ルーカス・モウラの劇的なゴールでトッテナムがアウェイゴール差で勝ち進むまで、4度の欧州王者はチャンピオンズリーグ決勝まであと数秒のところだった。
しかし、同シーズン、アヤックスがベルナベウを襲撃し、ユヴェントスを破った記憶は脳裏に残っている。テン・ハフが教え込んだ、流れるようなキレのあるパスワークもそうだ。
オナナは、中盤にパスを供給し、相手をプレッシングに誘い込む。端的に言えば、フィールドプレーヤーのためスペースを生み出す。
ここで、元GKのファビアン・バルテズについて言及するファンもいるかもしれない。エデルソン、アリソン、アーロン・ラムズデールといったプレミアリーガーに代表される、足技に優れる現代的なGKが台頭するずっと以前から、バルテズは自分のボックスの外に飛び出し、大胆な技を試し、冒険的なパスを受けていた。
しかし、それがユナイテッドのスタイルに溶け込むことはなかった。そのため、バルテズは珍しい存在だった。
オナナの加入は、ユナイテッドがこれまでとはまったく違った形で機能し始めることを意味する。エリックは先日「 彼は守備の "プラスワン "として使えるキーパーだから、戦略や戦術の中に必ず組み込んでいく」と語っていた。
言い換えれば、オールド・トラッフォードは、オナナがピッチ上で高いポジションを取るのを目撃することになる。要するに、ユナイテッドのポゼッション時に11人のアウトフィールドプレーヤーがいる一方で、相手は10人のディフェンダーに頼らなければならない。
アンドレはウルヴズ戦でユナイテッドのマン・オブ・ザ・マッチに選ばれ、トッテナム・ホットスパー戦でも称賛を浴びた。
彼のスタイルに驚かされる場合があっても、オナナの勇敢さにより高い位置でスペースが生み出される。
とはいえ、27歳の彼が単なるGKのジャージーを着たミッドフィルダーというわけではない。アヤックスからインテルに移籍した昨シーズン、彼はチャンピオンズリーグで7度のクリーンシートを達成し、ネッラズーリの土台を築いた。
下の動画で見ることができるように、先週末のノース・ロンドンで多くの見事なセーブを見せた。
慎重なアンドレは「後方からのプレーは得意だけど、場合によるね。最も重要なのは、状況を認識することだと思う。誰と対戦するかによって、ポゼッションしているときもあれば、そうでないときもある。僕は自分を現代的なゴールキーパーだと思っているから、どんな状況にも適応できる」と語った。
エドウィン・ファン・デル・サールやピーター・シュマイケルのように、ダビド・デ・ヘアの退団を寂しく思う。しかし、オナナの加入によって、ユナイテッドはファーストチームの限界を広げようとする大胆な試みを行っている。GKのエキサイティングで、大胆で、勇敢な新世界がM16にやってきた。